【日本社会のターニングポイント:小泉構造改革④】
長々と続けてきたこのシリーズも今回が最後(のつもり)です。
書ききれるか不安。
小泉後の流れ
日本ではバブル崩壊後の1991年頃から経済の立て直しを行おうと必至になってきましたが
政府の失策(金融引締め)やその他外部要因(アジア通貨危機等)により回復には至りませんでした(この期間を『失われた10年』と言います)。
思った通りに小泉政権時代に
「痛みなくして改革なし、改革なくして成長なし」
の掛け声の元、財政の健全化と経済成長を目指しました。
小泉は自民党の総裁任期(2期6年)満了後首相の座を現在の内閣総理大臣である安倍晋三氏に明け渡します。
小泉内閣の後を引き継いだ安倍内閣は年金問題により参議院選で大敗→退陣。
次の麻生内閣は衆議院選で民主党に過半数を奪われたため政権交代により退陣する結果となりました。
この間、2006年~2009年の3年間ですが経済政策にはあまり手をつけられていません。
民主党政権時の経済政策はとりあえず横に置いておいて、
2012年に再度政権交代が起こり第二次安倍内閣が発足します。
安倍政権下での経済政策
民主党の弱体化という超棚ぼた的状態の中で政権に返り咲いた安倍内閣は長期政権を視野に入れて動き始め、その目玉に据えたのが経済政策でした。
アベノミクスは大規模な財政出動(=政府がお金をじゃんじゃん市場に出すこと)による経済成長からの財政再建を目指しました。
小泉改革との共通点
小泉氏は政府の支出を【減らす】ことで、安倍氏は政府の支出を【増やす】ことで財政の健全化を図ろうとしたわけですがいっけん正反対のことをしているように思えます。
が、安倍政権は根底の部分で小泉路線を踏襲・強化しています。
一つずつ取り上げて詳しい解説をしだしたら途方もなく長くなるので派遣労働と社会保障の部分の事実だけを書いていきますが、
・労働者派遣法は派遣労働者を無期限で雇用(派遣労働の固定化)できるようになり
・社会保障費の負担額(高齢者の医療費、要介護者の介護料、年金等々)が上昇
しました。
政策の背景
社会保障費の支出削減はとりあえず置いて、
両者ともなぜ労働者派遣法の強化に腐心するのかというと、
それは偏に『人件費を削減したい』という経営者陣営からの要望があるためです。
小泉・安倍両氏ともに自民党に所属していますが、
自民党支持者(支持団体)には日本経済団体連合会(いわゆる経団連)や商工会議所等の経済団体が多く、その主たるメンバーは『経営者』です(ちなみに民進党(旧民主党)の支持母体は日本労働組合総連合会という労働者寄りの団体)。
経営者団体からの要望を聞き入れ続けてきた結果、企業の内部留保(企業内部での蓄積)は過去最高に達しています。
安倍氏は「企業の業績があがれば、労働者も給与増等の恩恵を被るはずだ」としていますが、今のところそういう話は聞こえてきません。
▼焦点:企業の内部留保が過去最高、給与に回らず春闘も期待薄(’17/3/9)
https://jp.reuters.com/article/employee-salary-idJPKBN16G09B
し、景気回復の兆しも見えません(というか実感が伴いません)。
▼アベノミクス景気、戦後3位の52カ月 実感乏しい回復(’17/4/6)
https://www.nikkei.com/article/DGXLZO14972180W7A400C1MM8000/
2001年に始まった小泉政権から(民主党政権の3年を挟んで)足かけ14年。
この間さまざまな政策をうってきたわけですが閉塞感は払拭されることなく漂い続けています。
この閉塞感を生み出したのは、小泉構造改革にからアベノミクスにまで通底する
・過剰に経営者を重視した政策
・拙速な社会保障関係費の削減
だったのではないかと私は考えるわけです。
不安定化した労働環境にセーフティネットの自己責任化が進む社会では、未来に希望を持つのはかなり勇気のいる作業だろう。と。
とは言うものの、じゃあどうすれば打破できるの?
という話になると思います。
そんなことわかりません。
そればっかり考えている人が答え出せていないわけですから。
ただ「こっちの方向に行けばいいんじゃない?」と言ってる人はいます。
次回、最後に明るい要素を提供してシリーズを終われればと思います。
お付き合いください(というわけであと1回書きます)。