【金融政策による景気回復の限界】
最近マルクスの「資本論」を解説してくれている本を読んでるんですけどその中に、
『「長期停滞」が続いている先進資本主義国では、「金融政策」によって~中略~実体経済の停滞を克服することにはいずれも成功していません」(シリーズ◆世界の思想 マルクス 資本論 :佐々木隆治 著 P207 / L8)←経済学徒にはオススメ
とあるんですね。
つまり金利を上げたり下げたり、お金の流通量を増やしたり減らしたりする「金融政策」では、景気回復できないと言ってるんです。
ここに至るまでの理論的な根拠を話し出すとものすごく長くなりますがざっくり説明すると
「”価値”は無限に創造することができない」
ということです(結局わかりにくいか…)。
そういえばどこかの国が
「”金融政策”を通じて景気回復する」
と豪語していましたよね…
ということで、ほんの少~し”お金”の本質を垣間見て理解が深まった今、
アベノミクスを再考してみようというのが今回の記事の狙いです。
長い前置きになりましたが始めていきます。
アベノミクスおさらい
2016/3/23【マイナス金利政策】でアベノミクスとはなにかを軽く書いています。
安倍さん、アベノミクスの宣伝をする時に色々言ってるんですけど具体的なことって1つしか言ってなくて、それは、
「アベノミクスとは金融政策です」
ってことなんですね。
アベノミクスの目的は景気回復なので、すっごく平たく言うと
「金融政策で景気を回復させます」
ってことになります。
で、何をしたかと言うと、
1.(金融機関が保有している長期国債を日銀が買い入れることによる)市場への資金供給
2.政府が発行する国債の日銀買い入れ(いわゆる買いオペ)による市場への資金供給
です。
ちょっとわけわかんないと思いますけど、要は、
「世の中にいっぱいお金を流したらみんなお金使うようになって景気回復するよね」
って話です。
日銀(というより政府)が思い描いたのは…
*日銀(政府)の妄想*
ーーーーココカラーーーー
銀行に資金が増える
↓
銀行は持ってても仕方がないので貸し付けるために金利を下げる
↓
企業は金利が下がったのだから金利が安いうちにお金を借りて設備投資をしようと考える
↓
たくさんのお金がぐるぐるまわる
↓
景気が回復する
ーーーーココマデーーーー
という流れです。
これがアベノミクス。
後は株価と為替の維持のために莫大な資金を投入してドルやら大手企業株やらを爆買いしてるんですがこれはちょっとあとで言及します。
金融政策で”需要”は生まれるのか
なんか頭偉い人に言われたら
「そうやったら景気回復するんだろうなー」
ってなんとなく思っちゃうじゃないですか。
私も思ってたんですよ。日銀の理屈にも一理あるなーって。
けどね、その時の自分に言ってあげたい。
『金利が下がったからって、企業が設備投資に資金を回すと思いますか?』
って。
そんなわけないですよね。
どれだけ金利が低かろうが1億の設備投資するなら1億+金利分は返済しないといけません。
となれば、
『1億+金利を返済してまださらに利益を生み出せる』
という確証がない限り投資には踏み切らないですよね。
当たり前ですよね。
投資がわかりにくければ、
「売れるかどうかわからない商品をわざわざ作ったり仕入れたりしますか?」
に置き換えてもいいと思います。
需要がある(もしくは見込める)から先にお金を支払うわけですよね。
『金融政策では実体経済の停滞(=不景気)を克服できない』
のは、どれだけ市場の通貨供給量を増やしても人々の需要は喚起されないからです。
そういうことです。
それでも”景気拡大”は続く
先日、こんなニュースが出ました。
▼景気拡大、戦後最長に=6年1カ月も実感乏しく-月例経済報告(’18/12/20)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018122004826&g=eco
政府によると安倍政権発足後、金融政策が奏功し景気は回復基調にあるそうです。
その根拠は、「雇用・所得環境が大幅に改善した」からなんだそうです(判断は各々におまかせします)。
あとは、『円安を背景に、輸出主導による息の長い景気拡大を実現。株価上昇をもたらし』というところ。
円安も株高も日本政府の”爆買い”によるものなんですね。
▼ETF買い 月間最高 日銀、株価テコ入れ鮮明(’18/10/30)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201810/CK2018103002000150.html
海外通貨を爆買いすることで相対的に円安に仕向け輸出企業を応援(円安だと輸出に有利/詳しくは2016/5/11金利据え置きと円高の関係ー①をご高覧ください)。
大企業の株式を爆買いすることで株価を維持。
してるんですけど、買い支えに突っ込まれてるお金は私たちの税金です。
数値的には改善しているように見えますが、さてこれが本当に”景気拡大”なのか。
”需要”が回復しない限り『実感のある景気拡大』はなし得ないんじゃないかなーと思っています。
じゃあよこやまならどうするよ(コラム的に)
よこやまなら労働者の賃金を上げる方向で考えます。
世の中にはお金が溢れているのに”使いたい人”の手元にお金がないから循環しないわけですよね。
じゃあ使いたい人の手元にお金がやってくるようにしましょうよ。って話になると思うんです。
アメリカの有名車メーカー、フォードの創始者ヘンリー・フォードは、当時『高級品』であった車を自社の労働者が購入できるようにと賃上げ(これまでの2倍)を敢行し大成功を収めた。
という逸話があります。
低所得者層こそ潜在的消費拡大層ですし結局個人消費が伸びないと景気回復にはつながらないと思うんですよね。
お金持ちがこの先どれだけお金持ったからって消費が増えるわけじゃないじゃないですか。
なら、お金持ったら使うよーって人のとこにどんどこお金落としたらええんちゃうのって思うんですけどみなさんどうですかね。