【切り売りされる日本農業】
この記事もうちょいはやめに書こうと思ってたんですけど、
自民党の総裁選でかき消されてしまってました。
ようやく書けます。
先日この記事を共有した時に
『”定石”だと、自動車産業を残すために牛肉が売られることになると思います。』
と書きました。
▼トランプ氏、安倍首相との友好関係「終わる」 米紙報道(’18/9/7)
https://www.asahi.com/articles/ASL972C1VL97UHBI009.html
その部分のお話をしておきます。
日本の”農産物輸入自由化”
これまでの農産物輸入自由化の経緯をざっと年表で出してみます。
1955年:GATT(ガット:WTO=世界貿易機関の前身)加入
60〃:121品目輸入自由化(ライ麦、コーヒー、ココアなど)
61〃:大豆等自由化
63〃:バナナ、粗糖等自由化
67〃:植物性油脂、 チョコレート、ビスケット類、グレープフルーツ、豚肉、配合飼料等
72〃:農林水産物のうち 50%強(270 品目)の関税引き下げ
78〃:柑橘・牛肉の輸入量決定(米国)
83〃:柑橘・牛肉の輸入量拡大要求(米国)
88〃:柑橘・牛肉の輸入枠の順次拡 大、輸入数量制限を撤廃等合意(米国)
93〃:米の実質的な輸入解禁(ミニマムアクセス)
といった感じです。
”貿易”に関する基本的な考え方
現代は輸出入に関して特別な制限や保護を加えない『自由貿易』を是とする社会システムなので、
基本的には輸入の数量制限だったり、関税(輸出入にかかる税金)は撤廃する方向に動きます。
19世紀の行き過ぎた保護主義が第二次世界大戦の遠因になったという反省もあるため、
世界的には『地球は回る』くらいの感覚で『自由貿易は是』となっています。
ちなみに自由貿易の有名な提唱者は
”神の見えざる手” で一躍時の人となった《アダム・スミス》。
”比較優位論” といえばこの人、《デヴィッド・リカード》。
などです。
学校の社会の時間になんとなく覚えた知識がこんなとこに出てくるんですね。
ちょっとドヤってみたかっただけです。
さて話を戻します。
自由貿易=関税・輸入制限の撤廃
だとすると、
「別に日本の農産物輸入枠が拡大されたり関税が撤廃されたりしてもおかしくないよね」
って話になるんですけど実はそうでもなくて、
EUだってアメリカだって、主要各国は軒並み関税かけてますよね。
最近だったらアメリカが鉄鋼の関税を引き上げました。
▼焦点:アメリカ鉄鋼の街「再び偉大に」、トランプ関税の功罪(’18/5/31)
トランプのこれが”良い”か”悪い”かは別として、
自国内産業を守るためには関税をかけたり輸入量に制限をかけたりするという権利は各国に認められています。
他国との関係性の中でどう折り合いをつけていくか。
という話になるんですね。
日本が農産物で”譲歩”し続ける理由
これを言いたくてここまで書いてきたんですが、
なぜ日本が農産物で譲歩し続けるかと言うと、工業製品、特に自動車を守るためなんです。
発端はというか転換点は日米貿易摩擦。
超円安ドル高を背景に日本は電化製品や自動車の輸出を推し進め、アメリカに貿易赤字を抱かせるまでに至りました。
それで米国民感情に火がつき、なんとかしないととなった時に目をつけたのが農産物だったわけです。
それが78年からの怒涛の農産物輸入緩和に繋がります。
「自動車の輸入は認めるからバーターに農産物を差し出せ」
というのがアメリカ側の主張でした。
その流れでずっと来てるわけです。
最近は収まってたんですけどトランプが
「偉大なアメリカ(=鉄鋼業でバリバリやってた頃)をもう一度」
と言って当選しちゃったものだから再度自動車や工業製品が目をつけられることになったわけです。
で、日本はここやられちゃうとまずいからということで、今回もまた農産物を献上するわけですね。
ちょっと最後適当になっちゃいましたけど、そういう話です。
日本農業は工業製品の輸出のために切り売りされていくわけです。