【TAGなのかFTAなのか】
やばい。気づいたらもう下旬じゃないですか。
今月まだ1本しか書いてないのでサクサク書いていきます。
今日は日本とアメリカの貿易交渉についてです。
日本政府はTAG(=Trade Agreement on Goods、日米物品貿易協定)と言っていますが、
TAGとはそもそもなんなのか。
FTAとはどう違うのか(なぜFTAとは言わないのか)。
日米両政府の思惑。
ということを書いていきます。
はじめに:急に持ち上がった日米通商交渉
急に…と言っても前振りはありました。
トランプが貿易赤字を解消するって騒ぎ出した時ですね。
これまでにも何回かお伝えしておりますが、
トランプの言う
『偉大なアメリカ(=Make America Great Againってやつ)』
は鉄鋼業や自動車産業がぶいぶい言わせてた頃の話です。
日本がバブル期に郷愁を感じるのと似たような構造だと思います。
「あの素晴らしい時代をもう一度」ということと、
「貿易赤字を減らしました」という“分かりやすい結果”を得たいがための大騒ぎなわけです。
で、日本は完全に“自動車”をターゲットにされました。
以前、「自動車に高関税かける」って話ありましたよね。
▼米、車関税を最大25%に引き上げ検討 現地報道(’18/5/24)
あの流れです。完全に。
ただ、日本としては車”だけ”は困るわけです。
稼ぎ頭ですし関係してる人もめちゃくちゃ多いですし。
『自動車関連の従業員数は、関連部門を含めた人数で約532万人におよび、日本の全就業人口の8.7%、製造業人口の49.6%を占める巨大産業となっている。(wikipediaより)』
だそうです。
「自動車産業が停滞したら困る。他のものでなんとかならないか。」
というので始まった日米通商交渉です。
日本政府の絶対防衛ラインは自動車産業の堅持です。
たぶんここさえ守れるならある程度は譲るつもりでいるのだと思います。
ここで日本がいつも使う手が『農業を生贄にする』ことです。
今年9月30日に【切り売りされる日本農業】でも書きましたが、
日本はずっとこの手、つまり工業製品を守るために農産物の貿易自由化を押し進めること、で乗り切ってきました。
農業人口は減少を続け選挙に与える影響も小さくなってきてますし、アメリカは世界最大の農産物輸出国(2010 年の輸出額1,232 億ドル=約 10 兆 9 千億円、米国総輸出額の9.6%)なので思惑としても合致してきました。
今回も牛肉がバーターで差し出されるのではないかと見ています。
日本政府の苦肉の策“TAG”
日本の立場はあくまでもTPPありきなわけです。
アメリカを再度TPPに引っ張り込むんだということでこれまで交渉を行ってきたわけなので、
すべての貿易を包括するFTAという呼称はとれないんですね。
で、どうしようか…
という話になったときに、
「TPPではサービス(医療や金融など)も含めた交渉をしているが日米交渉は”物”にしぼったものだということにしてしまおう」
となり、TAGというこれまでになかった単語が出来上がりました。
本質はFTA
ではここで、合意された共同声明に目を通してみましょう。
▼日米共同声明
https://jp.usembassy.gov/ja/joint-statement-united-states-japan-ja/
3番にばっちり「サービスを含む」と書かれてあるんですね。
>3. 米国と日本は、必要な国内手続が完了した後、早期に成果が生じる可能性のある物品、またサービスを含むその他重要分野における日米貿易協定の交渉を開始する。
というわけで、今回日本政府がTAGだTAGだって騒いでますが実際はFTAで、全分野に置いてアメリカと貿易交渉が開始されますよというお話だったということです。
アメリカは中間選挙を惨敗で終えたトランプが外交で失策を取り返すべくかなり強硬に出てくるでしょう。
日本は自動車産業を守るためにその他の分野での最大限の譲歩を迫られることになるでしょう。
現在、この問題は国会内の農水委員会で議論されていますが、農業だけでなく様々な分野へ影響が波及することが考えられますし、特に、医療や保険、金融などはアメリカが以前から狙っていた分野ですので早々に交渉が開始されることになるでしょう。
TPPの際に議論した土台があるので、始まっちゃえばかなり早いと思います。
あれよあれよと協定妥結までいっちゃいそうな気がするので注視しないといけないなーと思っています。そんなところです。