【プーチンの訪日:日本が得たものと失ったもの③】
本年最終稿です。
前回はロシアのこれまでの行動から
ロシアの国家戦略と思惑を読み解いてみました(読み解けたんかな?)。
それでは肝心の会談の内容に入っていこうと思います。
プーチンの圧勝に終わった山口会談
まずは会見全文をお読みください。
▼【全文】安倍首相「日本とロシアの新たな時代を切り開くため、共に努力を」日露首脳会談後の共同記者会見
http:// http://logmi.jp/176138
日本は、『北方領土→平和条約→共同経済活動』の順に言及しています。
一方ロシアは、『日露の経済関係→平和条約→共同経済活動』となっています。
“南クリル諸島”というのが日本で言う北方領土にあたるわけですが、
プーチンがこれに言及したのは一度だけで、
それも”共同経済活動”という枠組みの中で話されました。
ここで注目したいのが安倍氏の以下の2つの発言。
「~北方四島を日本人とロシア人の友好と共存の島にしたいという、
元島民のみなさんの訴えに、私は強く胸を打たれました。」
「「自由に墓参りをし、かつての故郷を訪れることができるようにしてほしい」
という切実な願いを叶えるため~」
1つ目は、日本人とロシア人の『共存』
2つ目は、日本人の『往来の自由』
を求めているということです。
これまでの日本政府の立場は四島一括返還でした。
返還ということは日本が主権を持つということです。
法治国家である日本が主権を持つというのは、
『日本の法律が適用されている状況である』ということです。
今回日本が求めた「共存と往来の自由」は主権を持たずとも可能です。
決定的だったのがロシア外交担当のウシャコフ補佐官のこの発言。
《共同経済活動はロシアの法律だけに基づいて行われる》
ロシア国営のタス通信が報道した内容で
報道された瞬間はストレートニュースでバンバン上がってきてたのですが
今見たらすべてアクセス不可になってました。
その後に出てきたのが、「特別な制度」という単語(こっちはすぐ引っかかります)。
▼日ロ首脳、共同経済活動へ協議 北方領土「特別な制度」で
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS15H31_V11C16A2MM8000/
内容についてはこれからつめていくものだと思われますし
「共同経済活動は我が国の法的立場を害さないことが前提だ」と釘を刺しましたが、
政府が表立ってウシャコフ補佐官の発言を否定・訂正したという話は寡聞にして存じ上げません。また、日本からロシアへの3000億円の経済支援も決定しています。
▼日ロ経済協力、官民で投融資3000億円
http://www.nikkei.com/article/DGXLNSE2INK01_V11C16A2000000/
つまり、北方領土の返還は遠のきしかもロシアへの資金拠出も決まった。
ロシアとしてはかなり美味しい交渉だったと思いますし
日本はすべて取られてしまったというような印象です。
これから先、『特別な制度』のすり合わせもあるでしょうし、
交渉も活発化していくことと思いますが
今年に入って4回目の首脳会談でこの結果ということは、
領土問題に関してかなりのディスアドバンテージを背負ったといえます。
得たものは少なく、失ったものは多かった今回の会談ではないでしょうか。
(って論評するメディアはあまりないけど冷静に読み解けばこうなると思います。たぶん。)
ロシアについては、安倍氏が来年の早いうちに再訪すると明言していますので
折に触れて取り上げていこうと思います。